4.実験


 我々は10×30×0.5mmのy-cutLN基板を用いて、図8に示すようなMZ形光変調器を作製した。ここで、光導波路については基板上にTiを成膜し、電気炉で熱拡散させ、これを光導波路とする。電極にはNbNを用いた。また光源には、波長1.3mmの半導体レーザを用いており、出力を光パワーメーターで測定する。またコプレーナ電極上にのせているシールド板の作製プロセスを図9に示す。図9に示すように、Si基板の内側を3?7mm程度エッチングし、そこにNbNを成膜したものを用いた。

図8 実験に用いた進行波形光変調器の概観図
 



図9 シールド板の作成法

 
  完成した変調器を実験用モジュールに固定し、液体Heにより冷却した。製作した進行波形光変調器(L=20mm)のマイクロ波変調特性の測定結果を図10に示す。シールド板の効果を評価するために、シールド板がある場合と、ない場合の結果を示している。実線は実験で得られた減衰定数を用いて、(5)式により計算した理論値である。○、●印は測定値を表す。●印は光波とマイクロ波との速度整合が取れていない場合であり、(5)式から予測される周期構造が観測されている。このような周波数特性は、電極の損失が十分に小さい時に観測されるものであり、超伝導電極の低損失性を反映する結果となっている。一方、○印は速度整合が適正な時の周波数特性を示す。



図10 4.2Kでのマイクロ波変調実験の実測値と計算値の比較


 今回製作した光変調器はバッファー層は付加されていない。よって、○印の実験結果ははシールド板の高さが約3mmの場合であり、シミュレーション結果に比べて低い位置で速度整合が得られている。これは、シールド板が中心導体に近づくに連れて、中心導体からシールド板へ流れる電気力線が増加するためであると推察される。またバッファー層の欠如は高インピーダンスCPW電極を用いても、変調器の入力インピーダンスとマイクロ波信号源のインピーダンス不整合による変調効率の低下をもたらす。このため、図10の実験値は平均して理論値より10%程度変調効率が低下しているものの、Nmが低下されて速度整合が緩和されているため、光3dB 帯域は大幅に拡大されていることが分かる。


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